EC構築の費用は、最初に払う構築費だけでなく、毎月の固定費・売上にかかる手数料・運用の手間まで含めた「1年間の総額」で見ると、判断を誤りにくくなります。この記事では、主なネットショップサービスの公式料金(2026年10月5日に確認)をもとに月商別の試算を示し、ご自身の数字で計算できる式を紹介します。見積もりで確かめたい5つの点と、「払ったのに成果が出ない」を防ぐ契約前の決めごともまとめました。
EC構築の費用は「4つのかたまり」で考える
EC構築の費用は、構築費・毎月の固定費・売上にかかる費用・運用の手間の4つに分けると全体が見えます。見積書の中心は最初の1つで、残りの3つは公開後に毎月かかり続けます。
1.構築費(最初に一度だけ)
デザイン、商品ページの作成、決済や配送の設定など、公開までにかかる費用です。制作会社の見積書に書かれるのは主にここです。
2.毎月の固定費(売上がなくてもかかる)
ネットショップサービスの月額料金と、制作会社に払う保守費です。年払いで月あたりが下がるサービスもあります。
3.売上にかかる費用(売れるほど増える)
決済手数料と、サービスによってはサービス利用料です。月額が安いサービスほど、この率が高めの傾向があります。
4.運用の手間(社内の人件費)
商品の登録、注文の確認、発送の連絡、問い合わせへの返事。誰が月に何時間やるのかを決めないと、見えない費用として積み上がります。
構築費は何で決まるのか
構築費は、作り方と作業の量でほぼ決まります。要件を決めずに相場を探しても、自社に当てはまる数字は出てきません。
作り方は、月額で借りるネットショップサービスを自社で使う、同じサービスで制作会社に作ってもらう、パッケージやオープンソースのソフトで組み立てる、の3通りです。それぞれの向き不向きはネットショップのカート選びで整理しているので、ここでは繰り返しません。
作業の量を左右するのは、主に次の6つです。
- デザインはひな形か、一から作るか
- 商品登録の点数と、写真・説明文の用意
- 決済手段の数と設定
- 既存の在庫・受注システムとの連携
- 商品撮影の有無
- 今のショップからの移行の有無
見積もりごとにこの6つを並べると、金額の差の理由が見えます。モールか自社ECかがまだ決まっていない場合は、先にモールと自社ECの使い分けをご覧ください。
見落としやすい「売上にかかる費用」
公開後の費用で見落とされやすいのが、売上に比例してかかる手数料です。主なサービスの代表的なプランを、公式の料金ページから抜き出しました。どのサービスを勧めるものでもなく、計算の材料としてお使いください。
| サービス・プラン | 月額 | カード決済の手数料 | 補足 |
|---|---|---|---|
| BASE スタンダード | 0円 | 3.6%+40円 | ほかにサービス利用料3% |
| BASE グロース | 16,580円(税込・年払い) | 2.9% | 月払いは19,980円。サービス利用料0円 |
| STORES フリー | 0円 | 5.5%〜 | 一部の決済手段は6.5% |
| STORES スタンダード | 3,300円(税込・年間契約) | 3.6%〜 | 月額契約は3,960円(税込) |
| カラーミーショップ レギュラー | 5,940円(税込) | 3.4%〜 | 初期費用3,300円。2026年11月1日以降の契約・更新からの月額(それまでは4,950円。公式発表) |
| カラーミーショップ ラージ | 11,000円(税込) | 3.19%〜 | 初期費用3,300円。2026年11月1日以降の契約・更新からの月額(それまでは9,595円。公式発表) |
| Shopify Basic | 3,650円(年払い) | 3.55%〜 | 月払いは4,850円 |
| Shopify Grow | 10,100円(年払い) | 3.4%〜 | 月払いは13,500円 |
- 確認日は2026年10月5日です。料金は変わることがあるので、契約の前に各社の公式ページで確かめてください。
- 税込・税別は各社の表記に合わせています。「〜」はページに書かれている最も低い率で、決済手段によって率が上がる場合があります。
- 売上金の振込手数料、有料の追加機能やデザインのひな形の代金は含んでいません。
月商別に、月額と手数料の1年分を試算する
月額と手数料の合計は、次の式で自分で計算できます。
1年間の合計 = 初期費用 +(月額 + 月商×手数料率 + 1件あたりの手数料×月の注文件数)×12
上の表の数字を式に入れて計算しました。前提は、客単価5,000円、支払いはすべて国内のクレジットカード、初期費用を含む1年目の金額です。年払い・年間契約があるものは、その月額で計算しています。カラーミーショップは改定後の月額で計算しています。Shopifyは料金ページに税込・税別の表記がないため、表示の金額のまま計算しています。
| サービス・プラン | 月商10万円 | 月商30万円 | 月商100万円 | 月商300万円 |
|---|---|---|---|---|
| BASE スタンダード | 8.9万円 | 26.6万円 | 88.8万円 | 266.4万円 |
| BASE グロース | 23.4万円 | 30.3万円 | 54.7万円 | 124.3万円 |
| STORES フリー | 6.6万円 | 19.8万円 | 66.0万円 | 198.0万円 |
| STORES スタンダード | 8.3万円 | 16.9万円 | 47.2万円 | 133.6万円 |
| カラーミーショップ レギュラー | 11.5万円 | 19.7万円 | 48.3万円 | 129.9万円 |
| カラーミーショップ ラージ | 17.4万円 | 25.0万円 | 51.8万円 | 128.4万円 |
| Shopify Basic | 8.6万円 | 17.2万円 | 47.0万円 | 132.2万円 |
| Shopify Grow | 16.2万円 | 24.4万円 | 52.9万円 | 134.5万円 |
この表から読み取れるのは、どこが安いかではなく、月商によって順番が入れ替わるということです。月商10万円では、いちばん小さいのは月額のかからないプラン(年6.6万円)で、年8.3万〜8.9万円のプランが続きます。ところが月商30万円では、最小が月額3,300円・3.6%のプラン(年16.9万円)に替わり、月額0円の2プランは年19.8万円と26.6万円になります。月商300万円では、月額がいちばん高いプランがいちばん小さくなります。
どのプランが安いかは、月額ではなく自社の月商で決まります。
2つのプランの分かれ目は、月額の差÷手数料率の差で出せます。月額0円で6.6%+40円のプランと、月額3,300円で3.6%のプランなら、客単価5,000円で1件40円は0.8%にあたるので、率の差は3.8%。3,300円÷3.8%で、月商約8.7万円が分かれ目です。
月商は「今の半分」「今」「今の2倍」の3通りで計算しておくと安心です。決済手段やサポートは比べていないため、安い順がそのまま向いている順ではありません。残りのかたまりも足すと、1年間の総額が出ます。
| かたまり | 金額の出し方 |
|---|---|
| 構築費 | 見積もりの合計(撮影・移行・商品登録が入っているかを確認) |
| 毎月の固定費 | (月額+保守費)×12 |
| 売上にかかる費用 | 上の式の手数料の部分 |
| 運用の手間 | 月の注文件数×1件あたりの作業時間×時給×12 |
運用の手間も見落とせません。月商100万円・客単価5,000円なら注文は月200件で、1件15分の作業でも月50時間になります。
見積もりを受け取ったら確かめる5つのこと
見積もりの金額が妥当かどうかは、何が入っていて、何が入っていないかをそろえないと判断できません。受け取った見積もりごとに、次の5つを確かめてください。依頼の段階で伝えておく条件は、カート選びの記事の「相見積もりの取り方」にまとめています。
1.含まれるもの・含まれないもの
商品登録は何点までか、写真と説明文は誰が用意するか、撮影や移行は入っているか。「公開の翌日から注文を受けられる状態になるか」と聞くと、抜けている作業が見つかります。
2.公開後の修正の扱いと単価
文字の差し替えやバナーの入れ替えは何回まで無料か、1回いくらか。どこからが「追加の制作」になるのか。公開後にいちばん費用がふくらみやすいところです。
3.保守の範囲
毎月の保守費に、不具合のときの対応、システムの更新、データの控え、問い合わせへの返事の日数が入っているかを書面で確かめます。
4.データとドメインの持ち主
お客様や商品のデータを自社で取り出せるか。ショップのアドレス(ドメイン)の名義は自社か。契約をやめたとき、何が手元に残るのか。
5.追加費用が出る条件
商品点数や決済手段を増やしたとき、仕様を変えたときに、いくらかかるのか。「その都度お見積もり」だけで終わっていないかを見ます。
「払ったのに成果が出ない」を防ぐ、契約前の決めごと
制作費を払ったのに思ったような成果が出なかった、という経験をお持ちの方もいるかもしれません。その原因は、制作の腕よりも、何をもって成果とするかを決めないまま作り始めたことにある場合があります。契約の前に、次の3つを決めておきます。
ステップ1:何をもって成果とするかを、数字で決める
なぜ必要か
目標がないと、公開した時点で仕事が終わったことになってしまいます。
どうやるか
注文数、購入率(訪れた人のうち買った人の割合)、2回目の注文をくれたお客様の数など、見る数字を2〜3個に絞ります。3か月後と1年後の姿を社内で決め、見積もりの相手にも伝えます。
注意点
相手に成果の約束を求めるためではなく、同じ目標を見て話すための準備です。
ステップ2:公開後に、誰がいつ数字を見るかを決める
なぜ必要か
数字を見る人がいないと、売れていない理由に気づくのが遅れます。
どうやるか
「毎月の第1週に、担当者が注文数・訪問数・購入率を見て社長に報告する」のように、人と日と数字を決めます。制作会社が報告するのか自社で見るのかも、契約の中で確かめます。
ステップ3:構築費とは別に、公開後の改善の予算を分けておく
なぜ必要か
ショップは公開してから直していくことで、売れる形に近づきます。予算を構築費に使い切ると、直したいところが見つかっても手が打てません。
どうやるか
予算の総額を決めたら、先に「公開後の改善」の枠を取り分け、残りで構築費を考えます。見積もりを比べるときも、この枠が残るかを基準にします。
FULCRUMの視点:費用の比較より先に、何のために作るかをそろえる
金額から話が始まると、比べる基準がないまま「高いか安いか」だけを考えることになりがちです。
費用の比較は、何のために作るのかがそろってから、はじめて意味を持ちます。
代表の川﨑は、EC受注(延べ)12万件超の現場に関わってきました。作る前に「誰に、何を、月にどれくらい売りたいか」を言葉にしておくと、必要な機能も、見る数字も、1年間でかけてよい金額も、順番に決まっていきます。EC構築・リニューアルをお手伝いするときも、金額の前にこの整理から始めています。
すでにショップをお持ちの方は、無料EC診断で、今のショップのどこに手を入れると効果が大きいかを確かめるところから始めてみてください。作り直すか、今のショップを直すかを決める材料になります。これから作る方で見積もりの読み方に迷っている方は、無料相談で見積書をそのまま見せていただければ、4つのかたまりに沿って一緒に読み合わせます。
まとめ
- EC構築の費用は、構築費・毎月の固定費・売上にかかる費用・運用の手間の4つで、1年分を足して考える
- 月額と手数料は、公式料金と「初期費用+(月額+月商×率+1件の手数料×件数)×12」で自分で計算できる
- 月商によって安いプランの順番は入れ替わる。分かれ目は「月額の差÷手数料率の差」で出せる
- 見積もりは、含まれるもの・修正の扱い・保守の範囲・データの持ち主・追加費用の条件をそろえてから比べる
- 契約の前に、成果の数字・数字を見る人・公開後の改善の予算を決めておく
まずは月商を1つ決めて、候補のプランで式を1回まわしてみてください。計算の結果や手元の見積もりの読み方に迷ったら、その紙を持って気軽にご相談ください。一緒に順番に整理します。
EC構築の費用の相場はいくらですか?
一律の相場は出しにくいのが実情です。構築費は、作り方と作業の量で大きく変わるためです。相場を探すより、4つのかたまりに分けて1年分で比べるほうが判断しやすくなります。
月額0円のプランと月額のかかるプランは、月商いくらで逆転しますか?
この記事の前提(客単価5,000円・国内のカード払い)では、月額0円で6.6%+40円のプランと月額3,300円で3.6%のプランは、月商約8.7万円が分かれ目です。自社の客単価と率を「月額の差÷手数料率の差」の式に入れると、自社の分かれ目が出ます。まず売れるかを確かめる段階なら、月額0円から始めてかまいません。
EC構築に補助金は使えますか?
対象になる費用とならない費用があり、条件は公募の回ごとに変わります。詳しくは補助金でホームページ・ECサイトは作れるかで整理しています。補助金に合わせて仕様を増やすのではなく、自己負担の額と1年間の総額で判断するのがおすすめです。
いちばん安い見積もりを選んでもいいですか?
安いこと自体は問題ではありません。気をつけたいのは、含まれていない作業が多く、公開後に追加の費用がかさむ場合です。「確かめる5つのこと」で中身をそろえてから比べれば、安い理由に納得できるかを判断できます。
公開後の費用は、どのくらい見ておけばいいですか?
毎月の固定費と売上にかかる費用は、この記事の式に月商を入れれば計算できます。そのうえで、社内の作業時間と公開後の改善の予算を別に見ておくと、1年目に慌てずに済みます。自社の場合が分からないときは、無料相談で月商の見込みを伺いながら一緒に計算することもできます。




