「補助金でホームページを作れると聞いたのですが」というご相談を、よくいただきます。結論から申し上げると、作れる場合もあれば、作れない場合もあります。そして、この違いを取り違えたまま話が進んでしまうことが、実務でもっとも多い失敗です。この記事では、Web・EC投資で使える制度と使えない制度を、対象になる費用とならない費用の視点から整理します。
いちばん多い失敗は「制度の取り違え」
まず、押さえておいていただきたいことがあります。
「デジタル化・AI導入補助金」(旧・IT導入補助金)では、ホームページ制作やECサイト制作は対象外です。
この制度は、会計・受発注・在庫管理・顧客管理といった、業務のためのITツールを導入するためのものです。名称に「デジタル化」とあるため、ウェブサイトも含まれると受け取られがちですが、そうではありません。
ここを取り違えたまま制作会社と打ち合わせを進め、申請の直前になって対象外だと分かる。これは実際に起きていることです。
制度の名前ではなく、「何のための制度か」で判断する。
Web・ECに使える制度
では、ホームページやECサイトの費用に使える制度は何か。中小企業・小規模事業者にとって、現実的な選択肢は次のとおりです。
小規模事業者持続化補助金(もっとも使いやすい)
販路開拓のための取り組みを支援する制度で、ウェブサイト関連費が対象に含まれます。商工会・商工会議所が窓口となり、経営計画づくりを支援してくれる点も、はじめての方には心強いところです。
補助上限は、通常枠50万円に、インボイス特例50万円、賃上げ特例150万円が加わり、要件を満たすほど上限が上がる設計です。補助率は原則3分の2(赤字事業者は4分の3)です。
自治体(県・市)の補助金
福岡県や各市町村が独自に設ける制度です。国の制度より小規模なものが多い一方、競争が緩やかで使いやすいことがあります。地域限定で募集されるため、情報を逃さないことが大切です。
ものづくり補助金・省力化投資補助金
設備投資が主目的の制度です。ウェブサイト単体では対象になりにくいものの、生産プロセスや販売方法の革新の一部としてシステムを含める場合に、検討の余地があります。
持続化補助金で「ウェブ関連費」を使うときの注意
もっとも使われる制度だからこそ、押さえておくべき制約があります。
ウェブサイト関連費には上限があり、単独では申請できません。
つまり、「ホームページ制作費だけで申請する」という形は認められていません。機械装置の購入、展示会への出展、広報費、新商品開発といった他の経費と組み合わせる必要があります。
この点を知らずに、ウェブ制作費のみで計画を立ててしまい、不採択になる。あるいは申請の直前に組み立て直しになる。これは避けられる失敗です。
上限額と対象範囲は、公募回によって変わります。 申請を検討される際は、その回の公募要領をご確認ください。
申請前に知っておくべき順番
補助金は「思い立ってから申請」では間に合わないことがあります。順番を守ることで、無理のない準備ができます。
ステップ1:GビズIDプライムを取得する
なぜ必要か
国の補助金の電子申請(Jグランツ)には、本人確認済みのアカウント「gBizIDプライム」が必要です。これがないと、そもそも申請ができません。
どうやるか
オンラインで申請します。マイナンバーカードがあれば、手続きを短縮できる場合があります。
注意点
取得に時間がかかることがあります。申請を決めてからでは間に合わないこともあるため、先に取得だけ済ませておくのが確実です。一度作れば、複数の補助金で使い回せます。
ステップ2:窓口に相談する
なぜ必要か
持続化補助金では、商工会・商工会議所が経営計画づくりを支援し、「事業支援計画書」を発行します。この書類がないと申請できません。
どうやるか
まず、自社がどちらの地区にあたるかを確認します。商工会の地区と商工会議所の地区では、申請の入口(事務局)が異なります。
注意点
事業支援計画書の発行には締切があり、申請の締切より早く設定されます。逆算して動く必要があります。
ステップ3:目的と数字を先に決める
なぜ必要か
「ホームページを作りたい」だけでは、計画書が書けません。何のために作り、どう販路が広がるのかを説明する必要があります。
どうやるか
「誰に、何を、どう届けるのか」を言葉にします。可能であれば、問い合わせ件数や新規取引先の数といった目標を置きます。
注意点
補助金のために事業を作るのではなく、やりたい事業に補助金を充てる。この順番が逆になると、採択されても成果につながりません。
ステップ4:交付決定を待ってから発注する
なぜ必要か
これが最重要です。交付決定の前に発注・契約・支払いをした費用は、原則として補助の対象になりません。
どうやるか
制作会社との契約は、交付決定通知を受け取ってから行います。事前の見積もり取得や打ち合わせは問題ありません。
注意点
「採択されたから発注してよい」ではありません。採択と交付決定は別の手続きです。ここを混同した結果、補助を受けられなくなった例があります。
補助金と助成金は違う
あわせて、混同されやすい2つの言葉を整理しておきます。
| 項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| 主な所管 | 経済産業省・自治体など | 厚生労働省が中心 |
| 採否 | 審査があり、申請しても通らないことがある | 要件を満たせば原則受給できる |
| 募集 | 予算と件数に上限。公募期間が短い | 通年に近いものが多い |
| テーマ | 販路開拓・設備投資・IT化など | 雇用・賃上げ・労働環境の改善 |
Web・EC投資で使うのは、多くの場合「補助金」のほうです。ただし、賃上げとあわせて設備投資を行う場合には、業務改善助成金のような制度が選択肢になることもあります。
なお、補助金は申請すれば受けられるとは限りません。 審査があり、不採択となる場合があります。この記事の内容も、採択を保証するものではありません。
制度の使い分け早見表
やりたいことから逆引きすると、選ぶべき制度が見えてきます。
| やりたいこと | 主に使える制度 |
|---|---|
| ホームページ制作・改善 | 持続化補助金(ウェブ関連費)/自治体の補助金 |
| ネット販売(EC)を始める | 持続化補助金/自治体の補助金 |
| 業務ツール・AIを導入する | デジタル化・AI導入補助金 |
| 大きな設備投資・省力化 | ものづくり補助金/省力化投資補助金 |
| 賃上げとあわせた設備投資 | 業務改善助成金(厚生労働省) |
まとめ
- デジタル化・AI導入補助金では、ホームページ・EC制作は対象外。ここの取り違えがもっとも多い
- Web・ECには小規模事業者持続化補助金が使いやすく、商工会・商工会議所が窓口になる
- ウェブサイト関連費には上限があり、他の経費と組み合わせないと申請できない
- GビズIDプライムの取得は時間がかかる。申請を決める前に済ませておく
- 交付決定の前に発注すると対象外になる。採択と交付決定は別の手続き
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自社にどの制度が使えるか整理したいときは、無料相談で投資したい内容と時期をお聞かせください。使える制度と、申請までの段取りを一緒に確認します。
IT導入補助金でホームページを作れると聞いたのですが
デジタル化・AI導入補助金(旧・IT導入補助金)は、会計・受発注・在庫管理といった業務用のITツールを対象とする制度で、ホームページやECサイトの制作は対象外です。Web・EC投資には、小規模事業者持続化補助金や自治体の補助金をご検討ください。制度の名称ではなく、何のための制度かで判断されることをおすすめします。
持続化補助金は、ホームページ制作費だけで申請できますか
できません。ウェブサイト関連費には上限が設けられており、単独での申請は認められていません。機械装置費や展示会出展費、広報費など、他の経費と組み合わせた計画にする必要があります。上限額と対象範囲は公募回ごとに変わるため、その回の公募要領をご確認ください。
商工会と商工会議所は、どちらに相談すればよいですか
自社の所在地がどちらの地区にあたるかによって決まります。商工会の地区と商工会議所の地区では、申請の入口となる事務局が異なります。まずご自身の地区を確認し、該当する窓口にご相談ください。持続化補助金では、窓口が発行する事業支援計画書が申請に必要になります。
採択されたら、すぐに制作会社に発注してよいですか
いいえ。採択と交付決定は別の手続きで、交付決定の前に発注・契約した費用は原則として対象外になります。交付決定通知を受け取ってから契約してください。事前に見積もりを取ることや、打ち合わせを行うことは問題ありません。この点を混同すると、補助を受けられなくなる可能性があります。
申請すれば採択されますか
補助金には審査があり、不採択となる場合があります。採択率は制度や公募回によって異なります。だからこそ、補助金を前提に事業計画を立てるのではなく、実行したい取り組みに対して補助金を充てる、という順番が大切になります。




