費用をかけてECサイトを作ったのに、注文が入らない。商品には自信があるのに、なぜ売れないのか分からない。こうしたご相談は決して珍しいものではありません。実際に中身を拝見すると、原因は商品や価格ではなく、「見つけられていない」「伝わっていない」「買いにくい」のいずれかであることがほとんどです。この記事では、中小企業が最初に見直すべき5つの視点を、手をつける順番とあわせて整理します。
「作れば売れる」わけではない、という前提
経済産業省の「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」によれば、2024年の物販系BtoC-EC市場規模は15.2兆円で、10年前の2014年(6.8兆円)から約2.2倍に拡大しています。ネットで買うことは、すでに当たり前の行動になりました。
一方で、同じ調査での物販全体のEC化率は9.78%です。つまり、モノの売買のうち約9割は、いまも店頭や対面で行われています。
この2つの数字は、一見すると矛盾して見えるかもしれません。しかし実務の感覚では、どちらも正しいと感じます。市場は伸びている。けれども、サイトを開設しただけで売上が生まれるほど単純でもない。
売れないECサイトの多くは、商品が悪いのではなく、商品にたどり着く前のどこかで人が離れている。
売れない理由を「商品力」や「価格」に求めてしまうと、値下げや品揃えの拡大といった、体力を消耗する方向に進みがちです。まずは、お客様がどこで離れているのかを切り分けることから始めます。
視点1:そもそも見つけられていない
もっとも多い原因が、これです。サイトは存在しているのに、買う可能性のある人の目に触れていない状態です。
検索したときに出てこない
自社の商品を、お客様の言葉で検索してみてください。「地域名+商品カテゴリ」「商品名+通販」といった検索です。検索結果に自社が出てこないなら、その経路からの新規のお客様は、現時点でほぼゼロと考えられます。
会社名で検索すれば出てくる、というのは別の話です。会社名を知っている人は、すでにお客様か、それに近い方です。新規のお客様は、会社名を知らない状態から探し始めます。
開設したことを、誰にも知らせていない
既存のお客様、取引先、名刺交換をした方。ネットショップを始めたことを、その方々にお伝えできているでしょうか。
意外に思われるかもしれませんが、最初の注文は、まったく知らない人からではなく、すでに関係のある方から入ることが多いものです。案内のはがき1枚、メール1通が、最初の実績をつくることがあります。
商品ページが「検索の受け皿」になっていない
商品名だけが書かれたページは、検索で拾われにくい傾向があります。「どんな悩みを持つ人に」「どう使われるものか」が書かれていると、その言葉で探している人と出会える可能性が高まります。
視点2:来ているのに、伝わっていない
アクセスはあるのに買われていない場合、伝わり方に原因があります。
実店舗であれば、お客様が迷っていれば声をかけられます。手に取って重さを確かめることもできます。ECでは、それがすべて写真と文章に置き換わります。
写真が足りない、というのは典型的な例です。1商品につき1枚しか写真がないと、お客様は判断材料を持てません。全体・使用中の様子・大きさが分かるもの・裏面や素材のアップ。この4方向があるだけで、印象は大きく変わります。
説明文が「仕様」で終わっているのもよくあります。サイズや素材は必要な情報ですが、それだけでは選ぶ理由になりません。誰のためのものか、どんな場面で使うと良いのか。そこまで書かれてはじめて、お客様は自分に必要かどうかを判断できます。
作り手の顔が見えないことも、選ばれない理由になります。中小企業のECは、大手と価格で張り合う必要はありません。むしろ、誰がどんな思いで作っているかが分かることが、選ばれる理由になり得ます。
視点3:買う直前で、やめられている
判断が固まっても、最後の一歩で止まることがあります。あと一歩まで来ているからです。
送料が最後まで分からない
商品ページに送料の記載がなく、カートまで進んではじめて金額が出る。この形は離脱を招きやすいものです。「送料無料になる金額」も、商品ページに書かれていれば、もう一品を検討していただけることがあります。
決済手段が少ない
クレジットカードしか選べない、あるいは銀行振込しかない。どちらの場合も、そこで諦める方が一定数います。扱う商品と客層に合った手段が揃っているか、確認する価値があります。
スマホで操作しづらい
物販系ECのスマートフォン経由の比率は年々高まっています。ご自身のスマホで、実際に商品を選び、カートに入れ、購入手続きの直前まで進んでみてください。文字が小さい、ボタンが押しにくい、入力欄が多すぎる。そうした引っかかりが、そのまま離脱の理由になります。
視点4:一度きりで、終わっている
新規のお客様を集め続けるのは、コストがかかります。一方で、一度買ってくださった方にもう一度買っていただくのは、それよりずっと現実的です。
同梱物にお礼状を入れる。メールで使い方を案内する。季節の商品が出たときに知らせる。特別なことではありませんが、これをしているかどうかで、1年後の売上は変わってきます。
購入者のメールアドレスは、すでにお持ちの資産です。使わないままにしておくのは、もったいないことだと思います。
視点5:数字を見ていない
ここまでの4つを見直すにも、判断材料が要ります。
- 月に何人が訪れているか
- どのページがよく見られているか
- どこで離脱しているか
- どんな検索でたどり着いているか
アクセス解析は無料で導入できます。設置されていないなら、そこが最初の一歩です。数字がなければ、改善は勘に頼るしかなくなります。
どこから手をつけるべきか判断がつかない場合は、EC構築・リニューアルのご支援のページもあわせてご覧ください。
ECは「作って終わり」ではなく、公開してからが本番。
手をつける順番
5つを同時に進める必要はありません。むしろ、順番を守るほうが早く結果につながります。
ステップ1:現状を測れるようにする
なぜ必要か
どこが問題かを特定できなければ、打ち手を選べません。
どうやるか
アクセス解析を設置し、1〜2週間ぶんのデータを溜めます。あわせて、自分のスマホで購入手続きの直前まで進んでみます。
注意点
この段階では、まだ何も変更しません。まず現在地を知ることに徹します。
ステップ2:買いにくさを取り除く
なぜ必要か
すでに来ている人を逃さないほうが、新しい人を呼ぶより費用がかかりません。
どうやるか
送料の表示位置、決済手段、スマホでの操作性。この3点から着手します。
注意点
大がかりな作り直しは不要です。表示の位置を変えるだけで改善することも少なくありません。
ステップ3:伝わり方を整える
なぜ必要か
買いにくさを取り除いても、選ぶ理由がなければ買われません。
どうやるか
売れ筋の商品を3〜5点だけ選び、写真と説明文を作り直します。全商品を一度にやろうとしないことが続けるコツです。
注意点
効果が出た書き方を、他の商品に横展開していきます。
ステップ4:見つけてもらう仕組みをつくる
なぜ必要か
ここまで整えてから集客したほうが、来ていただいた方が実際の注文につながります。
どうやるか
お客様の悩みに答える記事を書く、Googleビジネスプロフィールを整える、既存のお客様に案内する。無料でできることから始めます。
注意点
広告は、ステップ2と3が終わってから検討します。買われない状態で広告を出すと、費用だけが出ていきます。
まとめ
- 売れない原因は商品力ではなく「見つけられていない・伝わっていない・買いにくい」のどれかであることが多い
- まずアクセス解析を入れ、自分のスマホで購入直前まで進んで、現在地を確認する
- 送料表示・決済手段・スマホ操作性から手をつける。作り直しは不要なことが多い
- 写真と説明文は、売れ筋3〜5点に絞って作り直し、効果が出た形を横展開する
- 集客はいちばん最後。買われる状態にしてから人を呼ぶ
サイトURL・業種・メールアドレスの3項目で、8つの観点から改善の優先度をまとめてお送りします。無料EC診断を見る →
ECの現状をどこから見直すか整理したいときは、無料相談で今のサイトと数字をそのままお聞かせください。効果の大きい順番を一緒に考えます。
ECサイトを作ってから、どのくらいで売上が立ちますか
商品や客層によって幅がありますが、「公開したその月から順調」というケースはまれです。検索から見つけてもらえるようになるまでには、一般に数ヶ月単位の時間がかかります。まずは既存のお客様や取引先へのご案内で最初の実績をつくり、並行して検索経由の流入を育てていく進め方が現実的です。
アクセスはあるのに売れません。何から見直すべきですか
購入手続きの直前で離脱されている可能性が高いため、送料の表示位置、決済手段の種類、スマートフォンでの操作性の3点をご確認ください。ご自身のスマホで実際にカートまで進んでみると、引っかかる箇所が見つかることが多くあります。
商品写真は、何枚くらい必要ですか
商品の性質にもよりますが、全体・使用中の様子・大きさが分かるもの・素材や裏面のアップ、の4方向を目安にご用意いただくと、判断材料としては十分に機能します。すべての商品で一度に揃える必要はなく、売れ筋の商品から順に整えていく方法をおすすめしています。
リニューアルすべきか、いまのサイトを直すべきか迷っています
判断の目安は、カートシステムそのものに制約があるかどうかです。表示の変更や写真の差し替えで対応できる範囲であれば、まず改善で様子を見るほうが費用を抑えられます。一方、スマートフォン表示に根本的な問題がある、必要な決済手段を追加できないといった場合は、リニューアルを検討する段階かもしれません。
広告を出せば売れるようになりますか
買われる状態が整っていない段階で広告を出すと、費用だけがかさむことになりがちです。広告は、来ていただいた方が実際に購入まで進める状態をつくってから検討されることをおすすめします。順番としては、買いにくさの解消と伝わり方の改善が先です。




