食品ECで売る商品を絞るとは、自社の全ラインナップから「看板性・利益率・物流適性」の3つの軸で5〜10品を選び抜くことです。卸売の品揃え発想のままではECは売れません。本記事では、中小食品メーカーが最初の商品選定で迷わないための、具体的な判断軸を整理します。
まず押さえたい:なぜ食品ECは商品を「絞る」必要があるのか?
ECで売る商品を絞る理由は、お客様が「選び切れない店」では結局なにも買わずに離脱するからです。
卸売の現場では「品揃えの広さ」が信頼の証になります。「あそこに頼めば、なんでもある」と思ってもらえることが、長年の取引につながってきました。しかしECでは、この発想がそのまま逆風になります。50品・100品が並ぶページに来たお客様は、選びきれずに数秒で離脱します。これが「全部載せ症候群」と呼ばれる失敗パターンです。
ECで強いのは「専門店」です。「お米なら、あそこ」「醤油なら、あそこ」と認知される店が、結果的に多品種も売れるようになります。最初から手を広げると、何屋さんか分からなくなってしまうのですね。
中小食品メーカーが商品選定で陥る3つの誤解とは?
商品選定の場面で、卸売中心の食品メーカー様が陥りやすい誤解が3つあります。
誤解1:「定番商品=ECでも売れる商品」と考えてしまう
長年取引先に卸している定番商品が、ECでも一番売れるとは限りません。卸売の定番は「業務用」「大容量」など、エンドユーザーが個人で買うには不向きなことが多いからです。ECで売れる商品は、家庭用サイズで贈答にも使える形のほうが、初動が立ちやすい傾向があります。
誤解2:「利益率は気にせず、まず幅広く出そう」と考えてしまう
ECには卸売にない大きなコストがあります。送料、決済手数料、梱包資材、出荷作業の人件費です。利益率が低い商品をECで売ると、注文が増えるほど赤字が膨らむ現象が起きます。卸売と同じ感覚で価格設計するのは危険です。
誤解3:「冷凍・冷蔵も常温も、ぜんぶ並べて選んでもらおう」と考えてしまう
温度帯が混在するECは、お客様にとっても運用側にとっても負担が大きい設計です。お客様は同梱できない注文に戸惑い、社内では出荷オペレーションが複雑化します。最初は温度帯を1つに絞るのが現実的です。
食品ECで売る商品を絞る3つの軸
自社の全ラインナップから、ECに乗せる商品を絞るときは、次の3つの軸でスコアリングしてみてください。
軸1:看板性 ── その商品が、自社の代名詞になりうるか
「うちは○○の会社です」と一言で語れる商品があるか、を見ます。看板商品は、お客様の記憶に残り、口コミや検索のきっかけになります。逆に「これが看板です」と即答できない会社は、商品選定の前に「自社の強みは何か」を整理することから始める必要があるかもしれません。
軸2:利益率 ── EC独自のコストに耐えられるか
ECで一商品あたりにかかるコスト(送料・決済手数料・梱包資材・出荷人件費)を全て差し引いた上で、利益が残るかを計算します。目安として、ECでは粗利率30%以上が必要です。20%を下回る商品は、注文が増えるほど赤字になりやすく、ECでの主力にするのは難しい構造です。
軸3:物流適性 ── 温度帯・賞味期限・サイズ
物流上の扱いやすさは、ECの運用負担を大きく左右します。次の3点でチェックしてください。
– 温度帯:常温・冷蔵・冷凍のどれか(混在は最初は避ける)
– 賞味期限:発送から最低でも30日以上残る商品が安全
– サイズ・重量:60〜80サイズに収まると送料負担が下がる
冷凍便と常温便では、送料も箱代も別物です。最初は1温度帯に絞ったほうが、運用がシンプルに回ります。
3つの軸を使った商品選定の進め方(次の社内会議の議題に)
3つの軸が分かっても、実際の選定作業に落とすには3ステップが必要です。次の社内会議で、この順番に議論を進めてみてください。
ステップ1:全商品を3軸でスコアリングする
エクセル等で、自社の全商品を縦軸に、3つの軸を横軸に並べた表を作ります。各商品を5段階で評価し、合計点を出します。
社内の複数名(営業・製造・経営者)で別々に採点して持ち寄ると、自社の認識のズレが見えてきます。
ステップ2:上位5〜10品を初回ラインナップに
スコア上位の5〜10品を、ECの初回ラインナップに選びます。点数だけで機械的に決めず、「看板になり得るか」「自社のストーリーで語れるか」も加味してください。
1〜2品は、戦略的にあえて入れる「実験商品」を混ぜると、お客様の反応が見えて学びになります。
ステップ3:3〜6ヶ月運用して入れ替える
選んだ商品は固定ではなく、3〜6ヶ月ごとに見直します。売れない商品は外し、新しい候補を入れる ── このサイクルを回すことが、ECを「育てる」ことの中身です。
最初の選定で完璧を目指す必要はありません。仮説を立てて、市場の反応で答え合わせをする ── これがECらしい意思決定の進め方です。
FULCRUMの視点:商品選定は「足し算」より「引き算」の戦略
食品メーカーの自社EC支援を続けてきて感じるのは、商品選定は「何を載せるか」より「何を載せないか」の判断が成果を決める、ということです。
私たちはこれまでEC受注12万件以上の運用に関わってきました。その中で見えてきたのは、最初の半年で売上が立つ会社ほど、商品数を絞り込み、限られた商品にすべてのリソースを集中させていた、という共通点です。
商品を絞ると、商品ページの作り込みも、写真撮影も、SEO対策も、すべての密度が上がる。
逆に100品載せると、どの商品の解像度も中途半端になり、結局どれも売れません。ECの本質は、足し算より引き算 ── そう思っておくと、社内の意思決定がずっと楽になりますね。自社だけで評価軸を決めきれないときは、EC構築・運用のご支援で客観的な視点を一緒に入れることもできます。
まとめ
- ECで売れるのは「専門店」。50品の品揃えより、5〜10品の絞り込みが強い
- 商品選定の3つの軸は「看板性」「利益率」「物流適性」
- 全商品を3軸でスコアリングし、上位5〜10品を選定して、3〜6ヶ月で見直す
- 商品選定は「足し算」より「引き算」。絞るほど、商品ページの密度が上がる
次の社内会議で、まず「自社の3軸スコアリング表を作る」を議題にしてみてください。表を作る過程そのものが、自社の強みを再発見する時間になります。
全商品をECに載せたら、なぜ売れないのですか?
お客様の選択肢が多すぎると、判断疲れで離脱するからです。最初は5〜10品まで絞り、お客様にとって「迷わずに買える店」を目指してください。
看板商品が決まっていない場合、どうすればいいですか?
「お客様がリピートしている商品」「営業現場で一番自信を持って勧めている商品」のどちらかから探すと、看板候補が見えてきます。社内で答えが割れる場合は、その議論自体が看板を磨くプロセスになります。
売れない商品は、ECから外したほうがいいですか?
3〜6ヶ月で売上のない商品は、一度外す判断をおすすめします。ただし、その商品ページが検索流入を生んでいる場合は残す価値があります。アクセス解析で「売上ゼロでも訪問はある商品」は、コンテンツとして温存してください。
商品の入れ替え頻度は、どのくらいが目安ですか?
3〜6ヶ月ごとが現実的です。短すぎるとお客様のリピート機会を奪い、長すぎると鮮度が落ちます。季節要素のある商品は、季節の切り替わりに合わせるとリズムが作りやすいです。
季節商品(お中元・お歳暮等)は載せていいですか?
載せて構いません。むしろ食品ECでは、季節商品が新規顧客の入口になることが多いです。ただし、シーズン外に「売れない在庫ページ」として残らないよう、表示の出し分け(時期によって非公開化等)を設計しておいてください。




